Jade
ヨガの健康・美容効果は広く注目されているのに…
ヨガで怪我をしている人が多いことはあまり知られていない…
わたしはインストラクターとしてちょっとこのことにモヤモヤしています。
今日は『何故ヨガで怪我をするのか?』など、ヨガで起こる怪我についてインストラクターが辛口に語っていきたいと思います。
この記事のもくじ
『身体の声を聞いて』『無理はしないでください』はインストラクターの決まり文句
ヨガのクラスに参加すると、必ずと言っていいほど先生が「身体と心の声を聞きましょう」とか「無理はしないで」みたいなナレーションをしているのを聞きませんか?
ヨガで起こる身体の痛みや困りごとが出来た時に「どうすればいいか?」を先生に尋ねても、同じように「無理はしないでください」というアドバイスが返ってるくるケースが多いと思います。
何故どこの先生も「無理をしないで」「身体の声を聞いて」と言うのでしょうか?
これ…実はインストラクターの定型文なんです。
インストラクターの養成講座やスタジオの研修など、ヨガインストラクターになるための教養コースで
怪我をさせない=無理させない
という風に教えられて、「無理はしないでください」と言うように教えられたから、みな口を揃えてこう言うんです。
更に言うと、わたしたちはヨガインストラクターでありお医者さんではないので
痛みがあるときの治し方や生徒さんの痛みの原因が何か?はわからないんです。
わたしたちが指導しているのはあくまで運動方法。
『健康になれそうなヨガ』と言えども所詮スポーツでしかありません。
スポーツインストラクターには医療行為をする権限はないので、「何をしたら治ります」とか「これが原因でしょう」ということは言えないんです。
だから、とにかくインストラクターに求められることは「生徒さんに無理をさせない」ということ。怪我の予防しかできないんです。
「無理をしない」は難しい…
そんなわけでインストラクターは「無理しないでください」とアドバイスするわけですが
実際、無理しないってすごく難しいんです。
自分では無理していないつもりでも痛みや怪我が起こってしまったり、思わぬところでバランス崩してしまったり…
いつもはできることなのに疲れが溜まっていて痛みにつながってしまうケースもあります。
予期せぬ怪我や痛みは誰にだって起こりうる。
プロのヨガインストラクターだって怪我している人はいっぱいいます。
プロは仕事だからという理由で無理をしなければならないことも多々ありますが、そうでなくても加減がわからずに失敗することだって沢山あります。
自分の無理のボーダーラインがわかっている人ばかりではないですよね?
むしろ、わかっていない人の方が多いんじゃないでしょうか?
自分の身体のことや限界値を完全に把握している人はいないんですから。(たとえお医者さんだってわからないと思う)
怪我は『自分の身体の声を無視した結果』という考え
少し専門的なヨガ哲学のお話になりますが、皆さんは『アヒンサー』という言葉を聞いたことがありますか?
アヒンサーは古代インドの言葉で『非暴力』を表します。
ヒンズー教をルーツとするヨガの経典の中では、いくつかの厳格なルールがあります。
その一つがこの『アヒンサー(暴力を振るわない)』。
ヨガでは他人や動物、自然、ものは勿論、自分自身に対しても暴力をふるってはいけないと言われています。
だから、ヨガのポーズで痛いほど無理をすることも、このアヒンサーの戒律を破って自分自身に暴力をしていることになります。
もしかすると皆さんは、ヨガのクラスでこんなことを先生が言っているのを聞いたことがあるかもしれません。
「自分の心と身体の声を聞いてください」
「痛みを感じるほどに頑張らないでください」
これはこのアヒンサーの教えから生まれた言葉です。
「自分自身の身体が痛いとかこれ以上伸びないと言っているのに、周りに合わせて無理をしたりしてはいけませんよ~。それは自分に対する暴力ですよ。」
こんな意味を込めながら先生たちは話しています。
それゆえ、インストラクターによっては「ヨガで怪我をした…」とか「ヨガやると痛いんです…」という生徒さんに対して、「それは自分の身体の声を無視した結果ですよ」という人もいます。(厳しい先生は)
それって、言い換えれば「怪我をしたのは貴方が悪い」と言ってるようなものですよね?
時にはこう言う先生が言うことを間に受けた生徒さん自らが、自分自身の怪我について「身体の声を無視したから自分が悪い」と仰ってたりすることも。
でも…
そうなんだろうか?
自分の身体の声を無視した結果だから、自分が悪いんでしょうか…?
わたしはここにすごくモヤモヤする。
だって…長年ヨガ修行やっている行者やプロの人だって、その『身体の声』とやらがちゃんとは聞こえなくて、ヨガのアサナ(ポーズ)で失敗しているのに…
日本で美容健康目的で週に何回かヨガ教室に通っている人に、『自分の身体の声を聞かなかったから怪我をしたんだ』という結論で片付けてしまっていいのでしょうか?
勿論、怪我しないように自分自身を繊細に観察する能力を身に着けることは必要だと思います。
でも、どんなに繊細に注意をはらっていたって、どんなに長年ヨガをやっている人だって、ちょっとしたきっかけに怪我や痛みを発生させてしまうんですから、『自分の身体の声を聞けなかったから』という注意ミスみたいな表現で怪我の理由を片付けてしまうのは違う気がするんですよね。私は。
ヨガは怪我をしやすい運動
だらだらと長く色々書いてきましたが、結局ここまでで何が言いたいのか?というと
ヨガは怪我をしやすい運動だってことです。
怪我する人がいるのは『無理をしたから』だとか、『身体の声を無視したから』だとかじゃありません。
ヨガそのものに怪我のリスクがあるんです。
勿論、運動としての健康増進効果はありますが、他のスポーツと同じくらい痛みや怪我の危険性がある行為だと思ってもらった方がいいと思います。
普段はしないような動きを沢山しますから、大なり小なり筋肉や関節、骨などに負担はかかります。
「健康そうなヨガ」だから安全ということはありません。
『ヨガのよさそうなイメージ』だけが先行して、『ヨガで怪我をしている人がいる事実』は見過ごされているのが現状です。
世の中にあまたいるヨガの先生にどれだけ同じ考えの人がいるかはわかりませんが、わたし個人はそう思っています。
怪我をしないでヨガをするために知っておいてほしいこと
これを読んでいただいたみなさんには是非怪我をしないでヨガをしてほしい…
そういう願いから、怪我をしないでヨガをするためのハウツーをいくつかご紹介します。
ここで紹介するのはあくまでわたしの個人的な考えや経験談。
先生によって考えは違うので、皆さんが通われているスタジオ・教室の先生とは違った意見になると思います。
どの意見を参考にするか、どの意見も参考にしないのか?は、「どの意見が一番納得できるか?」を基準にして皆さん自身で判断してくださいね。
アジャストメントをする先生のクラスは避ける
クラスのなかで『アジャストメント』をする先生がいると思います。
アジャストメントとは先生が手を使って生徒のポーズを補正する行為です。
ポーズの最中に先生が身体に手を触れ、引いたり押したりするあれです。
アジャストメントはヨガで起こる怪我の原因になります。
骨格や筋肉を大きく開いて使っている状態で無理に外から他人の力をかけるのは、わたしは反対ですね。危険だと思います。
わたしのインストラクター仲間も皆が賛同していました。
SNSで人気のヨガ講師の生徒さんが、続々アジャストで怪我をしているという話題をつい先日も聞きました。
人の身体は骨格や筋肉の付き方などに個体差があります。
よく『身体のゆがみ』なんて言葉を聞くと思いますが、身体のゆがみの原因も人に寄って様々です。(足首が原因の人、首が原因の人、筋肉のバランスが原因の人などなど)
それを、一つの形に矯正する(アジャスト)のは無謀きわまりないというか…
個性を無視したとても危険な行為だと思います。
もし、みなさんが今通われているヨガのクラスの先生がキツいアジャストをするならば(やさしく手で触れる程度なら大丈夫)、怪我防止のためにもちょっと疑問だけは持ってもいいかもしれません。
どこかに痛みがあるようだったら、アジャストは辞めてもらうようにしましょう。
難しいポーズが出来る・身体が柔らかいほどすごいという考えは危険だと認識する
ヨガを初めてしばらくは『高度なポーズが出来る人やべったりと床に伏せるような柔軟性を持つ=すごい』みたいな価値観に取りつかれる人もいるかと思います。
これはとても危険。大間違いです。
確かにヨガの高度なポーズが出来たら格好良いし、身体が柔らかい人が羨ましく思うのは理解できます。
でも、ヨガのポーズはできたらできただけ健康になれるわけではないし、身体が柔らかければ怪我をしないというわけでもない。
むしろ過度な柔軟性は怪我の原因につながることがあります。難しいポーズはそれだけ身体に無理がかかります。
曲芸やりたい人でもない限り、通常通りの日常生活を健康的に送るだけなら、別に必要以上の柔らかさやヨガ以外では絶対やらない様なポーズは必要ないですよね?
ヨガを始めるといつしか『ヨガで健康的に生きる』『ヨガで痩せたい』みたいな最初の目的がずれて、『すごいポーズが出来るようになりたい』『もっと高度なテクニックが欲しい』という新たな目標が生まれてくるようになります。
向上心、やりたいという気持ちは素晴らしいことです。
ヨガに夢中になるのも十分気持ちは理解できます。
でも過度な向上心は時に『自分自身の本来の目的』を見失いかねないリスクがあるということも忘れないでほしいです。
健康増進の為に始めたヨガで身体を痛めて不健康になった…なんて本末転倒な結果に陥らないためにも。
他人と比べない・競わない
ヨガのクラスで無理をしてしまう一番の理由は
『他人と比べることで生まれる劣等感』
『他人と競いたくなる競争心』
だと思います。
この気持ちは大概誰もが抱えたことがあるはずです。
「隣のあの人はすごく開脚してるのに…わたしは全然開かない…」とか。
「あのおばあちゃんはあんなに動けてるのに、わたしはこのポーズもできてない」とか。
どうしても人と比べて劣等感を抱きやすい。
逆に「他の人よりも体が柔らかい!」と自信をもったり、「あの難しいポーズだってできる!」と得意になってしまうこともあります。
『比べる、競う、優劣つける』はこれほど危険なことはないです。
出来る出来ないはその人の運動経験や性別、骨格、筋肉量、遺伝的要素などの違いなだけで、あくまで個性の差なんです。本当に。
大事なのは自分です。
自分の身体がどんな身体なのか?
自分が何が得意で何が苦手なのか?
そこに気付くのが怪我防止の意味でも大切です。
他人と比べてしまうと「負けたくない」「できるようになりたい」「恥ずかしい」という気持ちが芽生え、自分の限界を超えて無理をしようとしてしまいます。
これが怪我につながってしまうんです。
比べたがるのは人間の本能なので否定はしませんが、『比べる自分が出てきたら怪我のリスクがぐっと上がるんだな』と注意するのも忘れないようにしましょう。
怪我の経験がある先生を選ぶ
最後にアドバイスしたいのは『怪我をした経験がある先生を選ぶといい』ということ。
先生自身が怪我の経験があるのはとても大切です。
わたしは個人的に『インストラクターに限り怪我する経験は必要』だと思っています。
『生徒さんの痛みを知る』『無理をすることがどういう結果につながるのかを知る』ために、怪我はとても大切な勉強です。
怪我をした人でなければ『ヨガで怪我をする人の気持ち』はわからないからです。
実際、怪我をしたことのない先生は生徒にも無理をさせる傾向にあります。どうしたら怪我が起こるかを知らないからです。
是非皆さんはご自身が習われている先生に「ヨガでどんな怪我をしましたか?」と聞いてみてください。
もし、「こんな経験をしたよ」「だから皆さんに怪我しないでほしいと思っている」なんて話が聞ければ、その先生は信用が置けるという指標になると思います。
まとめ
「ヨガをしている」というと、「ヨガって健康そうでいいよね~」「やってみたいと思っていたんだ~」「やっぱ何か変わる?」なんて聞かれたりします。
勿論、ヨガをしていることで得られる素晴らしい恩恵は沢山あります。
多分、そういうヨガの『美しい部分』『ポジティブな部分』については大々的に知られているんじゃないかな?
でも、わたしは『ヨガをしていて得た恩恵』の数と同じぐらい『ヨガをしたから痛めた箇所』があります。
これは、わたしだけではなく、結構多くのヨギーが抱えてる問題なんではないかな?と思っています。
同じことの繰り返しになりますが…ヨガだって怪我はあります。
ヨガだから優しい、ヨガだから身体に無理がかからないわけではありません。
どうしても怪我はおこるものです。どんなに気を付けていても。
だから、無理をしない。結局これしかないんですね。
でも、無理をしないようにしたって怪我は起こる。
それは仕方のないことです。自分を責める必要はありません。
結局のところ、ヨガは万能ではないということです。
是非、皆さんは『怪我の起こりやすいヨガ』でなるべく怪我をしないように…
人と比べることなく、自分にとって楽しい・気持ちいいと思うところでヨガを楽しんでくださいね。
以上、ヨガで起こる怪我について、インストラクターJadeが本音を語った記事でした。
最後までお付き合いくださりありがとうございました。
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